ミシェル欧州理事会議長の広島市での声明

<日本語仮訳>
シャルル・ミシェル欧州理事会議長は5月13日、広島市の平和記念資料館と平和祈念公園を訪問し、以下の声明を発表した。
「このたびは、松井(一實)市長にご招待いただき、感謝申しあげます。この街、この公園を訪れることができて光栄です。
この資料館の見学を終え、深い悲しみ、そして深い恐怖の念を覚えます。この地で、そしてまた長崎で生じた苦しみと破壊は、記憶に長く残り続けています。77年が経った今もそうです。
しかし、この資料館を去るにあたり、同時に強い決意を抱きます。世界から大量破壊兵器を廃絶しなければならないという決意です。この街は、それが急務であることをまざまざと思い起こさせてくれます。
われわれには、核軍縮と軍備管理のための国際的なルールや機関があります。われわれは、世界の平和と安全を守るため、それらを守り、強化しなければなりません。
しかし、今こうしている間にも、世界の安全が脅威にさらされています。核保有国であり、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、主権国家であるウクライナを攻撃しています。そして恥ずべきことに、また受け入れ難いことに、核兵器の使用に言及すらしています。
このことは、欧州の安全保障を揺るがしているだけではなく、世界全体にとっての危険度を高めています。そして、ここ日本の隣国である北朝鮮は、つい昨日もそうであったように、違法で挑発的なミサイル実験を繰り返しています。それにより、緊張が高まり、安全が脅かされています。
このような差し迫った課題があるからこそ、平和とルールに基づく国際秩序に立脚したパートナーシップ、欧州連合(EU)と日本の間に存在するようなパートナーシップ、が非常に重要なのです。
昨日、東京で岸田(文雄)総理大臣とお会いし、共に共通の価値と原則を再確認しました。
われわれはまた、完全かつ検証可能で不可逆的な形での北朝鮮の核兵器の廃絶を支持しており、軍縮や不拡散など安全保障と防衛に関する協力を強化することで合意しました。
われわれはさらに、イランが核兵器を手にすることを不可能にするための国際合意、いわゆる包括的共同作業計画(JCPOA)を維持するべく、絶え間ない努力を続けます。
既存の核軍縮や不拡散の規範を強化し、普遍的なものにすることはわれわれの世代の責務です。
今日、日本の総理大臣の故郷でもあるこの場所に立ち、欧州と日本が強い絆で結ばれていることを実感します。
だから、世界大戦による死や破壊を経験した欧州と日本が、二度と同じことが起こらないようにするため、誰よりも強い決意を抱くことは、驚くに当たらないことです。
私たちの人生には、いつまでも心に残る瞬間があります。私にとって、この平和記念資料館を訪れたことは、間違いなく忘れられない思い出となりました。
当然ながら、苦しみの映像、胸が張り裂けるような悲惨な映像、この悲劇に直接影響を受けた男性、女性、子どもたちの顔に、非常に心を動かされてました。
この悲劇は、人間の本性の最もひどい部分をを示したものだと言えます。
しかし、同時に、再建と希望の炎を再び灯すために立ち上がった人々の勇気、回復力、強さをも示してくれました。
私は、誰もが人類の歴史を知る機会を得て、より大きな自信と楽観をもって未来を見つめる力を持つことを望みます。
特に、特別な責任を負っている政治指導者もまた、世界の平和と安全のために正しい決断を下すために、この追悼の義務を守ることを望みます。
松井市長、そして平和記念資料館当局の皆様、貴市とこの資料館を訪問する機会を与えてくださったことに感謝いたします。私が広島と日本を離れるとき、この特筆すべき訪問の思い出を持っていくことは間違いないでしょう」