日EUアニメーション・ワークショップ、産業連携を一段と強化

<日本語仮訳>

欧州連合(EU)と日本は、世界のアニメーション産業において最も洗練され、影響力のあるエコシステムを擁している。2025年大阪・関西万博では、初の「日EUアニメーション・ビジネス・ワークショップ(EU–Japan Animation Business Workshop)」が開催され、大きな注目を集めた。

 

本イベントは、アニメーション分野における地域横断的な協力への強い関心を裏付けるとともに、欧州・日本双方の第一線で活躍する産業リーダーのネットワーク形成を後押しした。また、今後の協力深化と共同プロジェクト創出に向けた共通の提言を取りまとめ、将来的なロードマップを提示した。

世界を牽引する両産業の共通課題

EUと日本はいずれも、豊かな芸術的伝統と世界的な評価を誇るスタジオ群を背景に、成熟したアニメーション産業を構築している。一方で、従来型テレビ市場の縮小、グローバル・プラットフォームの影響力拡大、新世代の視聴者との関係再構築の必要性といった共通する課題にも直面している。しかし、両地域の産業構造や文化的背景は大きく異なる。

それでもなお、アニメーションは「想像力の言語」であり「文化外交の戦略的ツール」という点で共通する。相互理解と信頼、共有可能な枠組み、創造的な協働を重ねることで、物語の届け方や創造性のあり方を、次の10年に向け再定義していく可能性が拓かれている。

持続可能な日EUアニメーション・ネットワーク構築へ

2025年9月24日〜26日、欧州対外行動庁(EEAS)は、欧州委員会の通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局と協力し、欧州および日本のアニメーション産業から、プロデューサー、配給・ライセンス関係者、権利管理専門家、文化・制度担当者など約30名のトッププロフェッショナルを大阪に招いた。

Group Photo of workshop participants.

Animation in Europe会長でプロデューサーのフィリップ・アレッサンドリ氏は次のように述べている。「このワークショップの第一の目的は、互いを深く理解することです。ヨーロッパと日本で、シリーズや映画がどのように制作され、どのように資金調達され、どのようなジャンルやターゲット層を想定しているのか。それを知ることが出発点になります。」

今回のワークショップは、単なる意見交換にとどまらず、継続的なビジネスコミュニティの基盤を築く機会となった。参加者は、グローバル・ライセンス戦略、ストップモーション制作、法務・IP枠組みなどについて議論を重ね、欧州市場の多様性(=断片化)や日本に特有の製作委員会方式など、それぞれが抱える課題も共有した。 

Xilam AnimationのCCO、カテリーナ・ゴネッリ氏は次のように語る。

「日本市場が国際共同制作に向けて開かれつつある状況を見るのは、欧州プロデューサーにとって非常に刺激的です。両者の仕組みは異なっていますが、目指す方向性は明確に一致しています。」

今後の協力を加速させる具体的提言

主な提言は以下のとおり

  • ビジネスモデルやIP共有を調整する共同制作協定の整備
  • 吹替・字幕・マーケティングを支援する共同ローカライゼーション/配給支援ファンド
  • アート系映画館、映画祭、配信プラットフォームを結ぶ日EUアニメーション配給ネットワーク
  • インターンシップや大学×産業界のプログラムを含む人材交流スキーム
  • 日本の市場主導型モデルと欧州の公共資金支援を組み合わせた共同IPインキュベーターの設立

未来に向けた共有ビジョン

A person on a pedastal addressing an audience.

欧州の多様なストーリーテリングや資金調達モデルと、日本のグローバルブランド力およびファン文化が結びつくことで、両地域は世界市場で競争力のあるアニメーション作品を共同創出できる潜在力を持つ。

株式会社ポリゴン・ピクチュアズ代表CEOの塩田周三氏は次のように述べている。「この枠組みは、非常に力強い基盤となります。具体的な解決策を導くためには、今後も継続的な対話を重ねていく必要があります。」

大阪でのワークショップは、EUの文化外交にとって重要な節目となり、アニメーションを創造産業戦略の中核、さらには革新と成長をつなぐ越境的な架け橋として位置づけるものとなった。

詳細は最終報告書(英語)を、同報告書の日本語概要はこちらをご覧ください。