日・EU合同金融規制フォーラム第3回会合における共同声明
<日本金融庁仮訳>
日・EU合同金融規制フォーラムの第3回会合が2022年3月10日及び11日、テレビ会議形式にて開催された。参加者は、現在の地政学的動向が日本、EU及び世界的な金融システムに与える影響について議論し、この文脈における高いレベルの不確実性には注意を要するとの見方を共有した。
参加者はまた、サステナブルファイナンス、デジタル金融及び国際的なフォーラムにおけるあり得る緊密な協力に関連する進展について議論した。また、銀行、保険セクター及び証券市場における多くの具体的な規制及び監督上の論点についても議論した。本フォーラムの機会において、日EU・EPA附属書8-Aの下で確立された規制協力を補完する実務的な枠組みに関する共通理解が確認された。
日EU合同金融規制フォーラムは、天谷知子 金融庁金融国際審議官及びアレキサ ンドラ・ジョア・シュローダー欧州委員会金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局次長が共同議長を務めた。本フォーラムには、金融庁及び欧州委員会に加え、欧州中央銀行(ECB)、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州証券市場監督機構(ESMA)、 欧州保険年金監督機構(EIOPA)及び単一破たん処理委員会(SRB)の幹部が 同席した。
参加者は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが3年目に入り、また、現在の地政学的状況が重大な不確実性とリスクを生み出していることを踏まえつつ、世界、 日本及びEUの金融サービスセクターの趨勢について議論した。加えて、それぞれの危機対応・支援措置の進展の概要を紹介し、短期から中期における措置の段階的廃止や、昨今の国際情勢を踏まえた対応についても情報交換した。参加者は、金融安定リ スクを軽減するために、国際協調、特に金融安定理事会(FSB)における協調努力 の重要性について言及した。
参加者は、それぞれの法域におけるサステナブルファイナンス分野における進展について意見交換を行った。特に、IFRS財団の下で、国・地域の要件との相互運用性のための柔軟性を認めつつ、グローバルベースラインとなる野心的な報告基準を策定することの重要性を再確認するとともに、サステナビリティに関する開示に向けた双方の取組みをそれぞれ紹介した。また、サステナブルファイナンス・国際プラット フォーム(IPSF)及びG20サステナブルファイナンス作業部会(SFWG)における取組みに関する協力について情報交換した。
参加者は、デジタル金融の発展について議論した。参加者は、技術革新が金融シス テムにもたらしうる大きな利益を認識する一方で、急速に発展した技術革新に関連する現存の及び生じつつあるリスクへの注視を続けることの重要性を強調した。参加者 は、分散型金融(DeFi)に関連する技術の発展と、ステーブルコイン及び裏付け のない暗号資産が金融システムに及ぼす影響について議論した。この中で、金融庁は、 ステーブルコインに関する法規制の枠組み案を提示した。両当事者は、国際金融システムに対する暗号資産の潜在的なリスクについて意見交換を行った。両当局の管轄域外におけるステーブルコインに関連した問題も議論された。また、金融事業者及び金 融機関のオペレーショナルレジリエンス(業務の強靭性)についても議論された。この文脈において、欧州委員会は、2020 年のデジタルオペレーショナルレジリエンス法案(DORA)に関する議論の現状を説明した。
参加者は、保険分野に関する意見交換を実施し、特に、保険監督者国際機構(IAIS)の国際資本基準及び包括的な枠組みの実施について議論した。金融庁は、日本の経済価値ベースのソルベンシー規制に係る進展、及びIAISの「保険セクターに おけるシステミック・リスクのための包括的な枠組み」に関する監督上の取組について欧州委員会に説明した。また、欧州委員会は、EUのソルベンシーII規制の見直しプロセスにおける新たな進展と、保険セクターに係る再建・破綻処理指令案について 金融庁に説明した。
参加者は、それぞれの管轄区域における最終化されたバーゼル3改革の実施状況について相互に情報交換した。欧州委員会は、2021 年 10 月 27 日に採択した銀行規制パ ッケージの主要な内容を紹介した。この議論の中では、EUにおける第三国で法人格が確立されている金融機関の支店に対する取り扱いについても議論が及んだ。
欧州委員会は、EUにおける銀行の危機管理と預金保険制度に関する現在進行中の見直しの現状を紹介した。参加者は、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の破綻処理における内部及び余剰総損失吸収力(TLAC)とホーム・ホスト間 の流動性調達の論点について議論した。金融庁からも再建・破綻処理に関する論点における進捗を紹介した。加えて、金融庁とSRBは、G-SIBsの破綻処理に関す る事項についての協力に関する年次のアップデートを行った。
参加者は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の移行及びその他の銀行間取引金利(IBOR)の改革に関する経験を共有し、米ドルLIBORの移行に関して国際的に一貫したアプローチが重要であることに合意した。金融庁と欧州委員会は、そ れぞれの金融指標制度が同等であることを認めるとの目標に合意した。
2022 年 3 月 11 日、金融庁と欧州委員会金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局は、実務上の取り決めを定めた協力枠組み文書の採択について共通理解に至った。これらの取り決めは、日EU金融規制協力に関する附属書8-Aを補完するものであるが、変更するものではない。この枠組みは、日EU合同金融規制フォーラムの開催や参加者間の情報交換などの事項に関するものである。
参加者は、パンデミックの状況が許せば、2023 年にブリュッセルで開催する見込みである次回フォーラムに向けて、本フォーラムで議論された様々なトピックや、相互に関心がある他のトピックにさらに取り組むことにも合意した。
背景:
日EU間の金融規制協力は、日EU・EPAの金融規制協力に関する附属書8-A に基づくものであり、同附属書は、採択される予定の追加的な実務的枠組みによって補完されることとなる。金融規制協力の目的は、金融の安定性、公平かつ効率的な市場、及び、投資家・預金保険者・保険契約者・金融サービス提供者がフィデューシャ リー・デューティーを負う者の保護を、さらに強化することを目的として、二国間及 び国際機関の場において協力することとされている。日EU合同金融規制フォーラムは、金融庁と欧州委員会との間の議論のための主要なプラットフォームであり、毎年開催されている。ECB、欧州監督者機構及びSRBは、本フォーラム内の議論に定期的に参加している。
日本の金融庁と欧州委員会の金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局は、IPSFに参加している。IPSFは、環境面で持続可能なファイナンスを目指して、情報交換や関係する政策協調の努力を促進するものとなっている。その重点課題には、 タクソノミー、基準及びラベルといったイニシアティブや、投資家が世界的なグリー ン投資機会を識別しかつ把握するための基礎的な要素である開示が含まれる。
2019 年 10 月 11 日、金融庁とSRBは、再建・破綻処理に関する協力枠組みに合意 した。