EU、日本初の「模擬欧州連合」イベントを東京大学駒場キャンパスで開催

10月28日~29日にかけて、駐日欧州連合(EU)代表部は東京大学駒場キャンパスにおいて日本初となる模擬EUイベントを開催した。模擬EUはEUが資金援助する重要な教育分野における取り組みの一つであり、EU諸機関の仕組みに関する見識を大学生に提供することを目的としている。東京のイベントでは参加した学生28人がEUの27加盟国と欧州委員会の代表の役割を演じ、EUが気候変動と戦う政策を策定するプロセスをシミュレーションした。
議論の焦点は、原子力を再生可能エネルギーに分類し、EUにおける再生可能エネルギー・ミックスの一部とすべきかどうかという点と、各加盟国が、グリーン水素の製造をいかに具体化するか、であった。
模擬EU終了後、6月から始まった準備期間および2日間にわたる討議における優秀発表者として、フランス、ハンガリー、ポルトガルおよびスペインの役割を担った4人が選ばれた。4人には、ベルギー・ブリュッセルにあるEU機関への研修旅行が、ジャン=エリック・パケ駐日EU大使から賞状とともに授与された。
「気候危機は世界の問題であると同時に世代にまたがる問題でもあります。現在の若者たちが受け継ぐ世界に多大な影響を与える問題なのです。国や文化を越えて解決策を話し合う能力を若い人たちに身につけてもらうことは、極めて重要です」と、自らも若い頃に模擬EUのイベントに参加したジャン=エリック・パケ駐日EU大使は言う。
ハイツェ・ジーメルス駐日欧州連合代表部公使兼副代表は基調講演の中で、模擬EUの重要性を強調した。「日本の若い世代である皆さんは、いずれ責任を負い、国としての行く末の未来を方向づけることになるでしょう。EUと日本は非常に緊密なパートナーであり、皆さんにEUが実際にどのように機能しているのかを理解してもらうことは、本当に重要なことです」と述べた。
学生たちは夏に準備を始め、気候変動に対する各EU加盟国の立場を理解するために多くの時間を費やした。7月中旬に開催されたキックオフイベントでは、学生たちが直接パケEU大使や加盟国の代表と会い、EUの仕組みについて現実的な助言や見識を提供してもらった。
イベントを指揮した東京大学大学院総合文化研究科(EU研究)の森井裕一教授は、「参加学生はEU研究が専門ではありません。しかし、6月に初めてEUの政策決定と気候変動に関する講義を受講して以来、EU加盟国大使館の支援を受けながら、気候変動問題やEUの意思決定について研究しています」と述べた。
ブリュッセル研修参加が決まった東京大学公共政策大学院修士課程1年の山田廉さんは、ハンガリー代表としての感想について、「ハンガリーの立場は独特なのでかなり大変でした。でも、その違いをどう乗り越え、政策決定過程において、どのようにして合意形成していくかを考えなければなりませんでした。模擬EUに参加することで、多くのことを学びました」と語った。
東京大学教養学部3年生でフランス語が堪能な竹本陽さんは、フランス代表として参加し、 「自分の意見がフランス政府の方針と一致するように、フランス政府の文書を読んだり、フランス語のニュースサイトを研究したりしました」と述べた。
自身の目標である2050年までに気候中立を達成するために、EUは包括的な気候行動行程表「Fit for 55」の下、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減することを目指している。「Fit for 55」は幅広い活動分野を網羅しており、この中には低炭素エネルギー源への決定的な移行、乗用車や商用車の厳格な排出基準、運輸・建築・農業・廃棄物からの排出の削減およびEUの排出量取引制度の拡大などが含まれる。
時期は未定だが、第2回模擬EUが2024年に奈良県で開催される予定である。
駐日欧州連合代表部について
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