メルカトル中国研究所(MERICS)・欧州政策センター共催イベントにおける、EUと中国の関係に関するフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の演説

EU News 047/2023

 

<日本語仮訳>

「皆様、

欧州でも有数の豊富な知見と強い独立性を持つ2つのシンクタンクが共催するこの特別なイベントに参加できることを本当に嬉しく思います。世界情勢の解読が難しくなり、事実が日常的に疑われる時代において、こうしたシンクタンクの活動は、欧州にとってこれほど重要になったことはありません。なぜなら、私たちが望むような世界ではなく、世界の現実の姿をより深く理解することによってのみ、より良い情報に基づいて政策を立案することができるからです。だからこそ、シンクタンクは民主主義に欠かせない存在であると考えています。MERICSは、わずか10年の間に、中国の政治、経済、社会の動向を分析し、それらが欧州や世界に与える影響について独自の知見を蓄積してきました。そして、私たちは、皆様の、また全てのシンクタンクの、分析的であり批判的であるという権利を維持し、擁護しなければなりません。そのため、私は、皆様および中国政府によって不当な制裁を受けた他の全ての個人や機関との連帯を表明したいと思います。また、欧州政策センターが最近設立25周年を迎えられたことに祝意を表します。設立当初から、政策や学問の世界において、貴センターは真に欧州の声を代弁してこられました。この精神は、創設者の一人であり、最も無名にとどまっている欧州創建の父の一人であるマックス・コーンスタム氏を大いに想起させます。マックス・コーンスタムは、第二次世界大戦中に個人的にトラウマと悲劇を経験しました。この経験から、彼は統一された欧州の建設に人生を捧げるようになりました。そのような彼の仕事を常に導いたのは、「国家は永遠に他の国家を信頼することなく存続し続けなければならないと考えるか。それとも、変化の可能性、人の心や行動を徐々に変えていく可能性を信じるか」というひとつの問いでした。人々の間により良い理解をもたらそうとするこの姿勢は、欧州のシンクタンク・コミュニティの中で今も生き続けています。

そして、急速に変化する世界について知識を深める必要性から、私たちは、欧州の中国政策について議論するためにこの場に集まりました。欧州の中国との関係は、世界のどの場所でも最も複雑で重要なもののひとつです。そして、この関係をどう管理するかは、将来の経済的繁栄および国家安全保障を左右する要因となります。中国は、王朝の興亡を経て、初期の文明にまで遡る独自の歴史を持つ国です。自然との調和を説いた老子の教えや孔子の倫理観など、中国の哲学者たちは、今日の世界の多くの文化や社会を形成してきました。古代中国の四大発明である羅針盤、火薬、製紙、印刷は、世界の文明に革命をもたらしました。しかし、現代は、多くの意味で、この長く曲がりくねった、そしてしばしば激動する歴史の中でも最も注目すべき章の一つです。中国は、50年足らずの間に、広範な貧困と経済的孤立から世界第2位の経済を有する大国となり、多くの最先端技術の分野で先駆となりました。1978年以来、成長率は年平均9%を超え、8億人以上の人々が貧困から抜け出しました。これは過去半世紀の最も偉大な成果の一つです。中国の影響力は、全ての大陸と国際制度に及び、その野望はさらに大きくなっています。一帯一路構想を通じて、中国は発展途上国に対する最大の債権者となっています。また、その経済・産業・軍事力は、中国自身がまだ発展途上国であるという考えを疑わしくしています。昨年10月、習近平主席が共産党大会で、2049年までに中国を「総合的な国力と国際的影響力」で世界をリードする国にしたいと述べたと私たちは聞きました。より端的に言えば、習主席は、実質的に中国が世界最強の国家になることを望んでいるのです。その規模と世界的な影響力を考えると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから中国経済がようやく再開したことはポジティブな出来事です。そして、欧州と中国の市民や企業、外交官が再び交流できるようになったことは良いことです。なぜなら、お互いを理解することは、お互いと話すことから始まるからです。

しかし同時に、私たちは、この国際舞台への復帰の背後に何があるのかを懸念しています。欧州の対中戦略を定義すること、つまり成功とは何かを定義することは、現在の関係と中国の戦略的意図を冷静に評価することから始めなければなりません。中国との関係は欧州にとってあまりにも重要であるため、健全な関係の条件の明確化に失敗することで危険にさらすことはできません。ここ数年、私たちの関係がより疎遠に、より困難になってきたことは明らかです。私たちは、かねてから中国の全体的な戦略的態度が非常に意図的に硬化しているのを目にしてきました。そして今、この姿勢に呼応して、ますますその行動は積極的になっています。先週の習国家主席の国賓としてのロシア訪問は、そのことを痛感させるものでした。残虐で違法なウクライナ侵攻によって距離を置くどころか、習主席はプーチンとの「限りのない友情」を維持しています。一方で、中国とロシアの関係における力学に変化が生じています。今回の訪問で、中国がプーチンの弱点を、ロシアに対する影響力を高める方法として見ていることは明らかです。そして、過去100年の大半でロシア側に有利だった両国関係のパワーバランスが、今や逆転していることも明らかです。最も印象的だったのは、ロシア大統領府(クレムリン)の外の階段で習主席がプーチンに別れ際に言った「今、100年来見たことのないような変化が起きている。そして、この変化を協力して推進しているのがわれわれだ」という言葉です。中国は、国連安全保障理事会の常任理事国として、国連憲章の根幹にある原則と価値を守る責任を負っています。また、中国には、公正な平和を推進するために建設的な役割を果たす責任があります。しかし、その平和は、ウクライナの主権と領土の一体性の維持に基づかなければ、公正なものではありえません。ウクライナは、侵略軍の撤退を必要とする公正な平和の条件を提示するでしょう。ロシアによる併合を事実上確定させるような和平案は、全く実行可能なものとなりえません。この点について私たちは、率直に述べなければなりません。中国がプーチンの戦争とどのように付き合い続けるかは、今後のEUと中国の関係を決める要因となるでしょう。もちろん、中国自身は近隣でより自己主張の強い姿勢をとっています。南シナ海や東シナ海およびインドとの国境での軍事力の誇示は、私たちのパートナーやその正当な利益に直接影響を与えています。私たちはまた、台湾海峡における平和と安定の重要性を強調します。世界で最も急速に成長しているアジア地域の安定を弱めることは、世界の安全保障、貿易の自由な流通およびこの地域における私たち自身の利益に影響を及ぼします。新疆ウイグル自治区で起きている深刻な人権侵害も、国連人権高等弁務官の最近の報告書にもあるように、大きな懸念材料です。中国が人権に関する国際的な義務をどのように果たすかは、私たちが中国とどのように、そしてどの程度協力できるかを測るためのもう一つの試金石となるでしょう。中国は、軍事体制を強化しているのと同様に、ディスインフォメーション(偽情報)や経済・貿易を用いた威圧政策も強化しています。これは、他国を標的にして自身に従い、従順にさせるための意図的な政策です。リトアニア・ビリニュスに台湾の事務所が開設された際、中国が同国や他の欧州企業に対して報復措置をとったのはそのためです。また、人権問題についてコメントを出した衣料品ブランドに対する不買運動が中国人の間で起こったことや、中国の行動に対する見解を述べた欧州議会議員や政府関係者、学術機関に対する制裁もそうした例です。欧州連合(EU)加盟国が自国社会の中で看過できない中国の活動に対処しなければならない事案が増えてきました。地域においても、例えば、オーストラリア政府が新型コロナウイルス感染症の発生源に関して疑問を呈したことを理由に、同国産の大麦とワインの輸出を厳しく制限したこともありました。これは全て、中国が小国から望むものを確実に手に入れるために、依存関係や経済的影響力を意図的に利用していることの具体例です。

皆様、

こうした扇動行動は、中国が国内ではより抑圧的に、海外ではより積極的になっていることを示しています。中国の変化について、3つの大まかな結論を導き出すことができます 。そしてそれは、私たちの政策がどのように変わる必要があるのかを決めるものでもあります。第一は、中国が「改革開放」の時代から一転して、安全保障と統制の新時代に移行しつつあるということです。今月初め、習主席が中国軍を「国家の主権、安全、発展の利益を効果的に守る鋼鉄の長城」にするという公約を繰り返し述べたとき、私たちはこのことを目の当たりにしました。中国政府が国連文書や国際的な言説により広範に盛り込もうと努めている、グローバル・セキュリティ・イニシアチブにおいてもこの姿勢が見られます。軍事、技術、経済のいずれの分野においても、安全保障がますます焦点となることが予想されます。例えば、中国で活動する全ての企業は既に、国家の情報収集活動を支援し、そのことを秘密にすることを法律で義務づけられています。また、中国共産党が自身の諸機関や指導者を通じた経済の舵取りを強化する一環として、経済統制措置がより強化されることが予想されます。そして、中国が世界への依存度を減らし、世界の中国への依存を高めるための明確な方策が提示・推進されることになるでしょう。あるいは、数年前に習主席が単刀直入に述べたように、「中国は、国際的な生産網の中国への依存度を高め、強力な対抗・抑止力を形成しなければならない」と考えることでしょう。このことは、リチウムやコバルトのような重要な原材料に関して、特に当てはまります。高速鉄道や再生可能エネルギー技術のような分野や、量子コンピューター、ロボット工学、人工知能など、将来の経済安全保障および国家安全保障の中核となる新興技術についても同様です。このことから導き出される第二の結論は、安全保障と統制の必要性が、今や自由市場や開かれた貿易の論理に取って代わっているということです。習主席は、先の党大会での報告の中で、中国国民に闘争に向けて準備をするように述べました。習主席が冒頭の演説で、いずれも闘争と翻訳することのできる「douzheng(斗争)」と「fendou(奋斗)」という言葉を繰り返し使ったのは、偶然ではありません。これは、中華民族の使命感に基づく世界観の表れです。そのことから、3つ目の結論が導かれます。それは、中国共産党が、中国を中心とした国際秩序に向けた体制変化を明確な目標としているというです。このことは、世界秩序に関する代替的なビジョンを推進する決意を示している、多国間機関で中国が取る立場にも表れています。それは、個人の権利が国家安全保障に従属するような世界秩序です。そこでは、政治的・市民的権利よりも安全保障や経済が優先されます。このことは、一帯一路構想や新しい国際銀行など、現在の国際システムに対抗するために中国主導で設立された制度や機関に表れています。このことは、中国が提示した一連のグローバル・イニシアティブや、例えば、最近のサウジアラビアとイランの合意のように、中国が大国として、また平和の仲介者として自らを位置づけていることからも分かります。そして、モスクワで示された友情は、この新しい国際秩序のビジョンについて多くのことを物語っています。

皆様、

以上の全てを念頭に置くならば、私たちの対応は、国際制度そのものの強化に取り組むことから始めなければなりません。私たちは、貿易、金融、気候、持続可能な開発および健康などの地球規模の問題に関して、パートナーと共に取り組んでいきたいと考えています。そのためには、各国が競争し、協力し、利益を得ることができる機関や制度を強化する必要があります。だからこそ、中国との外交的安定と開かれた意思疎通を確保することが極めて重要なのです。私は、中国を切り離すことは不可能であり、また欧州の利益にもならないと考えています。欧州と中国の関係は白か黒かではなく、私たちの対応もその一方ではありえません。だからこそ、切り離すのではなく、リスクを回避することに焦点を当てる必要があるのです。近々、私がフランスのマクロン大統領と北京を訪問するのは、このためでもあります。この関係を管理し、中国側と開かれた率直な意見交換を行うことは、外交による対中関係のリスク回避と私が呼んでいることの重要な部分です。既に述べたような深く懸念すべき問題を提起することはためらいません。しかし、より野心的なパートナーシップや、競争をより公正で規律あるものにする方策について議論するための余地を残しておかなければならないと考えます。また、より広い意味で、欧州と中国が将来、国際システムの中でどのように生産的に協力できるか、そしてどのような課題に対して連携できるかについて考える必要があります。発展させることのできる機会がここかしこに点在しています。例えば、気候変動や自然保護です。私は、中国が歴史的な昆明・モントリオール・グローバル生物多様性枠組の締結に主導的な役割を果たしたことを大いに歓迎しています。また、数週間前、公海における生物多様性を保護するための国際合意においても、中国は積極的な役割を果たしました。世界的な紛争と緊張の時代にあって、これらの協定は、中国とEUが共に取り組んだ、注目に値する外交的成果です。そして私たちは、今年の第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)に向けて、同じ精神で協力することに期待しています。これは、利害が一致したときに何ができるかを示すものです。そして、パンデミック対策、核不拡散もしくは、世界金融の安定など、外交が今も有効であることを示しています。

ここで重要な点は、私たちは、経済的、社会的、政治的、科学的な関係を断ち切ることを望んではいないということです。中国は重要な貿易相手国であり、EUの物品輸出の9%と輸入の20%以上を占めています。不均衡は拡大していますが、物とサービスの貿易の大半は相互に有益で「リスクのない」ものです。しかし、私たちの関係は不均衡で、中国の国家資本主義体制が作り出す歪みの影響をますます受けています。だから、透明性、予測可能性および互恵性に基づいて、この関係をリバランスすることが必要です。両者間の貿易・投資関係が、中国とEU双方にさらなる繁栄をもたらすようにしなければなりません。2020年に交渉が終了した「投資に関する包括的協定」、いわゆる投資協定は、このようなリバランスを目指したものです。しかし、この3年間で世界と中国が大きく変化したことを認め、より広範な中国戦略に照らして同協定を再評価する必要があります。また、特に中国が軍事部門と商業部門を明確に融合させている中、貿易と投資が欧州の経済と安全保障のリスクとなる分野があることも承知しています。いくつかの機密技術や軍民両用品、さらに技術や知識の強制移転を伴う投資などがそれに当てはまります。だからこそ、外交によるリスク回避の後、将来の中国戦略の第二のテーマは、経済のリスク回避であるべきです。その出発点は、どのようなリスクがあるのかについて明確な認識を持つことです。つまり、中国の経済・安全保障上の野心がどのように変化しているかを認識することです。しかし、それは同時に、私たち自身の強靭性や依存関係、特に産業と防衛の基盤について批判的な目線で検討することを意味します。これは、私たちのレジリエンス、長期的な繁栄、安全保障に関する最大の脅威がどこにあるのかについて、中国との関係をストレステストにかけることによってのみ可能です。これによって、私たちは4つの柱からなる経済のリスク回避戦略を展開することができます。まず、自身の経済と産業をより競争力のあるものにし、強靭にすることです。特に、保健、デジタル、クリーン技術の分野に関して言えます。ネット・ゼロ技術の世界市場は、2030年までに3倍になると見込まれています。この分野で先駆者であり続けることができるかどうかが、今後数十年の経済を決めることになります。そのため、皆さんご存知のように、先週「グリーンディール産業計画」の主要部分として、「ネット・ゼロ産業法」を提案しました。その目的は、太陽光発電、陸上・洋上風力発電、広義の再生可能エネルギー、バッテリーや蓄電、ヒートポンプ、送電網技術など、グリーン移行に必要なクリーン技術の40%以上を域内で確保できるようになることです。しかし、この目標を達成するには、私たちの競争力に必要な重要な生産財に関して、さらなる自律性と多様性が必要となります。この分野では、例を挙げれば、レアアースの98%、マグネシウムの93%、リチウムの97%を私たちは中国という単一供給源に依存していることも理解しています。私たちは、10年前、東シナ海における日中の外交上の緊張が高まったとき、日本の中国からのレアアース輸入に起きたことを、深く心に留めています。デジタルおよびグリーン移行が加速するにつれて、これらの材料に対する需要は急増するでしょう。電気自動車の動力源であるバッテリーは、2050年までにリチウムの需要を17倍に押し上げると見込まれています。このため、私たちは、供給の多様化と確保を図るために、「重要原材料法」を提案しました。また、サイバーと海洋、宇宙とデジタル、防衛とイノベーションに関する強靭性強化のため、EU単一市場全体でこの問題を検討する必要があります。リスク回避戦略の第二の柱は、様々な既存の貿易手段をより有効に活用することです。ここ数年、EUは、5G、外国直接投資もしくは輸出規制など、安全保障上の懸念に対処するための措置を導入してきました。また、経済的な歪曲に対抗するための手段、特に外国補助金規制や、経済的威圧を抑止するための新たな手段を整備してきました。今、私たちは、必要なときにこれらの手段をより大胆かつ迅速に使用し、より積極的のこれらを執行すべく、EUレベルでの団結を必要としています。三点目は、中国の政策の変化により、いくつかの重要な分野について新たな防衛手段を開発することが必要になるかもしれないということです。EUは、マイクロエレクトロニクス、量子コンピュータ、ロボット工学、人工知能、バイオテクノロジーなど、機密性の高いハイテク分野において、中国やその他の国との今後の関係を明確にする必要があります。軍民両用の利用が排除できない場合や人権が関わる可能性がある場合には、投資や輸出が自身の安全保障上の利益につながるかどうかについて明確な線引きが必要です。私たちは、EU企業の資本、専門性および知識が、体制上のライバルでもある相手の軍事・情報能力を強化するために使われないようにしなければなりません。だから、私たちは、第三国への投資を通じて新興技術や機密技術の漏洩を許すような抜け穴が既存の手段のどこに存在するのか、確認しなければなりません。このため、現在、欧州が対外投資に的を絞った手段を策定すべきか、またその場合はどのように策定すべきかについて検討しています。これは、投資が国家安全保障上のリスクとなる軍事能力の開発につながる恐れのある、少数の機密技術に関するものです。欧州委員会は、今年中に、新たな「経済安全保障戦略」の一環として、いくつかの初期的考えを提案する予定です。同戦略では、経済安全保障を強化する必要があるのはどこなのか、また貿易や技術の安全保障に関する措置をいかにうまく活用するかを示す予定です。経済のリスク回避戦略の第4の柱は、他のパートナーとの連携です。経済安全保障に関わる問題については、世界中のパートナーと多くの共通点があります。特に、主要7カ国(G7)や20カ国(G20)のパートナー、そして、中国とより一体化し、リスク回避に関する考え方がより進んでいることが多いアジア地域やその他の地域のパートナーに当てはまります。この一環として、ニュージーランド、オーストラリア、インドおよび東南アジア諸国連合(ASEAN)や南米南部共同市場(メルコスール)のパートナーなど、まだEUが自由貿易協定を締結していない国や地域との自由貿易協定、メキシコやチリなど自由貿易協定を締結済みの国々との既存協定の現代化、そして既に存在する他の協定の活用強化に力を入れます。私たちは、インドとの貿易技術協議会や日本との日・EUグリーンアライアンスを通じて、デジタル技術やクリーン技術などの分野での協力を強化します。また、グローバル・ゲートウェイ戦略を通じて、アジア域内外のインフラに投資していきます。EUは、インフラ投資と金融に関して、発展途上国に真の選択肢を提供しています。これら全ては、サプライチェーンの強靭性を強化し、貿易を多様化させることにつながります。それが、経済のリスク回避戦略の中心要素となるべきです。

皆様、

私たちの目の前には、最も重要な問題に再び焦点を合わせるという課題があります。それは、中国共産党の変化する姿に合わせて、私たちも戦略を調整する必要があることを表しています。しかし、将来に備えて中国との関係を管理するのであれば、私たちは一致団結して取り組まなければなりません。世界情勢におけるこの決定的な瞬間に、私たちは一緒に対応するという集団的な意志を必要としています。強力な欧州の対中政策には、EU加盟国とEU諸機関の間の強力な連携と、私たちが恐らく直面するであろう分割統治戦術を回避する意志にかかっています。しかし、私は、地政学において必然的なものは何もないとも申し上げたい。中国は、歴史と進歩と課題が混在する魅力的で複雑な存在です。そして、それは今世紀を規定するであろう存在です。しかし、私たちが中国とどのように関わっていくかという物語は、まだ完全に書かれているわけではありませんし、受け身の物語である必要もありません。私たちは、民主主義の制度、価値観および開かれた経済が人々に繁栄と安全をもたらすことができることを、一丸となって示さなければなりません。そして同時に、私たちは常に、世界を違う視点から見る人々と対話し、協力する用意がなければなりません。そのことは、冒頭で触れた「考えや行動を徐々に変えるために努力する」というマックス・コーンスタムの言葉につながります。それは、皆様が日々仕事の中で行っていることです。そして、これこそが欧州が常に信じていることなのです。

欧州万歳。ご清聴ありがとうございました」

 

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