欧州および世界の死刑廃止デーに寄せるEU上級代表と欧州評議会事務総長の共同声明
<日本語仮訳>
10月10日の欧州および世界の死刑廃止デーに際し、ジョセップ・ボレル欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長と、欧州評議会のマリヤ・ペイチノヴィッチ=ブリッチ事務総長は、以下の共同声明を発表した。
「欧州および世界の死刑廃止デーに当たり、EUと欧州評議会は改めて、いかなる時、場所、状況下でも極刑の使用に明確に反対することを断固として表明する。
今年は、あらゆる状況下での死刑の廃止に関する欧州人権条約第13議定書の発効から20年目の節目の年である。われわれは、あらゆる状況下での死刑を廃止した(全EU加盟国を含む)全ての欧州評議会加盟国を称賛するとともに、いまだに同議定書を批准していない最後の2欧州評議会加盟国であるアルメニアとアゼルバイジャンに対し、速やかに批准するよう求める。
今なお極刑を存置している国の数が世界各地で着実に減少していることは、この残虐で非人道的かつ非効果的な刑罰の廃止に向けた世界的な傾向を確認するものである。2021年に死刑を執行したのは、全国連加盟国の9%に相当する18カ国と少数派であった。われわれは、これらの国々に対し、死刑廃止に向けた第一歩としてモラトリアム(執行停止)を導入すことを求める。
EUと欧州評議会は、占領下にあるウクライナ・ドネツクにおいて最近下された死刑判決を強く非難する。われわれは、これらの判決は欧州人権法やジュネーブ条約など国際法に違反していることを強調し、また判決を受けた個人の解放を安堵の念をもって歓迎する。同様に、われわれは、極刑の適用を『テロ未遂行為』にまで拡張し、最終的に政治的反体制派を標的にすることを目的とした、政治的な動機によるベラルーシの刑法改正に対して遺憾の意を表明するとともに、同国政府に対して、この決定を撤回するよう呼びかける。われわれはまた、死刑執行の件数が最近増加したシンガポール、イラン、サウジアラビアなどの国々に対し、世界的潮流に加わり、この非人道的な刑罰の使用を廃止するよう求める。
EUと欧州評議会は、世界中で死刑廃止を目指す、市民的および政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書を批准したカザフスタンを称賛する。また、今年死刑を廃止したパプアニューギニア、中央アフリカ共和国および赤道ギニアを称える。
死刑には、非人道的で屈辱的な処遇が伴う。死刑囚となることは、長期にわたる人の身体的・心理的健康の悪化を引き起こす。処刑を予期する精神的な苦痛や残酷な処刑法の使用は、欧州人権裁判所の判決で長年認識されているように、欧州人権条約第3条に反する。
最後に、EUと欧州評議会は、全ての国に対し、2017年に発足した『拷問に関与しない貿易のための国際的連携』に参加することを促す。拷問や極刑の執行に使用される物品の貿易を制限するべく、現在62カ国が同国際連携に関わっている。
死刑は、非人間的で屈辱的な処遇であり、人間の尊厳に反している。また、犯罪の抑止に役立たない。いかなる司法制度も、無実の人命の損失につながる誤審を免れない。われわれは、死刑判決が適用されなくなるまで、死刑廃止を主張することを止めることはない」
原文はこちらをご覧ください(英語)。
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